我が子の大切と、あの子の大切

お祭りが大好きな我が子。
その興味は自然と神様や神社へと広がっていき、今では神様のことをとても大切に思っているようです。
朝、神棚に手を合わせて商売繁盛と母子の健康を祈る父の横で、小さな手を合わせるのが日課になったのは、言葉を話すよりも前のこと。
おまつりごっこをしていても神様を敬う気持ちが伝わってきます。
そんな我が子が、神様のことで傷つく日がやってきました。
大切なものを持つということは、それによって傷つくこともあるだろうと思っていたけれど突然降ってくるとあわててしまう。
年中のはじまりのお話。

きっかけは、クラスメイトのママさんからの「ランチでもどう?」というお誘い。
幼稚園ママたちとのお付き合いをしていない私を気にかけてくれるクラスメイトママからの優しいお誘いだったので行ってみました。

パン食べ放題のランチ。
我が子はパンが大好き。そしてのんびりのんびり食べるタイプ。
一方、クラスメイトは上手にササっと食べ終えるタイプ。
ササっと食べ終えたクラスメイトは「一緒に公園行こう!」と何度も誘ってくれましたが、我が子はまだパンをホフホフ…。私たち親もやっと運ばれてきたお皿に手をつけ始めたところ。
待ってもらうしかない…。
とはいっても幼児が待てる時間の限界はすぐそこ。早々にぐずり出してしまいました。
そして、待たせている私たちに向かって「ばちがあたる!かみさまのばちがあたる!」と繰り返し始めたのです。
我が子は青ざめて、涙をためて、「やめて」「いやなこといわないで」と言うけれど、その言葉が火に油を注いでしまったようで、クラスメイトの言葉は止まりません。

神様を大切に思っている我が子にとって、それは冗談では済まされない言葉でした。
なにより、理由もわからず、突然責められていることに困惑している様子が見えました。
クラスメイトは、はじめて一緒に食事に来てそのあと一緒に遊びたい!と思っていた気持ちが果たされず悲しい気持ちでいっぱいだったのでしょう。

うーーーーーーん……………。
この状況、止めていいの? どこまで口を出していいの?
我が子の気持ち、クラスメイトの気持ち、ママづきあいも、ぜんぶ置いておいて。
私は、騒がしい食事が嫌いだ。
子連れの食事がある程度騒がしいのは仕方ないとしても嫌いなのだ。
そして、空気はよむものではなく吸うものである。

「かみさまの〜」と言い続けているクラスメイトに「ストップ!うるさい!」と私。
しーん…。
クラスメイトはお利口だ。
それに加えて、大人のベテランとは思えない私のセリフ…。

静まり返った空気の中で、まずはクラスメイトに感謝の気持ちを伝えました。
「一緒に公園で遊びたかったって言ってくれてありがとう。お待たせしてごめんね。」
楽しみにしている気持ちを蔑ろにしてしまって本当に申し訳ない。
そして我が子が神様のことを大切に思っていること、それをからかわれるととても傷つくことを伝えました。
一瞬の沈黙に続いて「ばちがあたる!ばちがあたる!かみさまのばちがあたる!」
あなたも傷ついたんだもの、すぐには引けないよねぇ。

ママさん、困り果てた様子でごめんね…本当にごめんね…と言ってくる。
いやいや、こちらこそせっかくの気持ちを傷つけちゃって申し訳ない…と言いながら、我が子を見ると、あかーーーーん!青白いまま固まってるーーー!!まばたきしてないーーー!!
なんか気持ちの処理が追いついていないっぽいから途中だけど帰るね!ごめんー!!!と固まったままの我が子を抱えてお会計をして店を出る。

ママチャリのチャイルドシートに乗る人によくがまんしたねぇと言ったら泣く。
エーンエーンと泣く。
普段、声をあげてなくことのない人、我慢していたんだね。
よくがまんしたねぇ、涙がとまったらアイス食べに行こうか、と言ったら瞬時に泣き止んで、ブルーパルクさんに行こう!と言う。
なんというか、うーん…えーーー…??
どのぐらいの深さで傷ついたのか…、うーーーーん…、自分が傷ついた時だってどのぐらい深いかなんて考えたことないからわからないなぁ…。
レストランに残されたあの子はどんな気持ちでお母さんが食べ終わるのを待っているんだろう。
帰宅する頃には笑ってくれていますように。

翌日、なにもなかったかのようにふたりは一緒に遊んでいる。
あの時、あの場に親がいなければなんとなく自分たちで解決していたのかもしれないなぁ。
この人たちはどのぐらいのことをわかって考えているのだろうか。

幼稚園から帰ってくると、手洗いうがい、着替え、リュックの中の片付けをしてから一緒におやつを食べる。
その時、お弁当の出来や、その日の楽しかったこと、先生の話などを話してくれるのだけれど、ある日こんなことを言った。

あのねえ、ママがおもっているよりも わけわかんないこどもがいるんだよ
ようちえんってそういうところなんだよ

わけわかんないって、どういうこと?あばれるの?と聞いたら口をつぐむ。
ののしる言葉、怒りや憤りの表現を教えていないので説明できないのかもしれない。
気になるけれど、いまそれを口に出したくないんだろうから、それ以上聞かない。
言いたくなったらお話ししてね、と声をかけておくと、ずっと時間が経ってから教えてくれることもあるのでしばらく待とう。

わたしの宝物もわけわかんないこどもの一人ではあるが、間違いなく毎日がんばっている。